第4話:再婚、そして再びの試練

摂食障害連載小説

「この人なら、大丈夫かもしれない」
――そう思ったのは、私の心がまだ、誰かに支えられたいと願っていたからだ。

一度目の離婚のあと、私は懸命に働き、子育てに全力を注いでいた。
余裕なんてなかったけれど、息子と過ごす静かな日々は、小さな幸せで満ちていた。

そんな中で出会った年下の彼。
優しい言葉をかけてくれて、私の過去も、息子の存在も受け入れてくれたように“見えた”。

「一緒に頑張ろう」
そのたった一言が、乾ききっていた私の心にしみわたった。
私は、救われた気がした。いや、救われた“つもり”だった。

そして、再婚――してしまった。

彼との間に子どもを授かったとき、私は新しい未来を信じた。
「今度こそ、家族になれるかもしれない」
そう思った。でも、それは幻想だった。

赤ちゃんが生まれてからの彼の態度は、あまりに残酷だった。
実の子には笑顔を向け、長男には冷たい視線を投げつける。
無視、威圧、時には怒鳴り声が家中に響いた。
あの穏やかな“優しさ”は、すべて仮面だったのだ。

「ねぇ、どうしてパパは僕のこと嫌いなの?」
ある日、長男がぽつりと聞いてきた。
胸が張り裂けそうだった。私の再婚を受け入れようと、小さな心で精一杯がんばっていたのに…。

そして、あの日。
彼が長男を激しく怒鳴りつけ、手をあげた。
私は、その瞬間に声を荒げて叫んだ。

「離婚して!子どもに手をあげる人とは、一緒にいられない!」

私の覚悟を前に、彼は一瞬驚いたような顔をした。
でも、私の目を見て本気だと分かったのだろう。
静かに、離婚届にサインをした。

私はもう、誰かに守られることを期待しない。
私が、私の子どもを守る。それが、母親としての誓い。

「愛」とか「再婚」とか――
甘い幻想はもう要らない。
私は、現実を生きる。
そして、母として立ち続ける。


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