第12話:そして私は「自由な鳥」になった

摂食障害連載小説

午後の陽射しが緩やかに差し込む休日、家事をひと段落させて、ベランダの洗濯物をぼんやりと眺めながらお茶を飲んでいた。

静かな部屋には、私ひとりだけ。

かつては、子どもたちの笑い声や足音があふれていたこの空間に、今は穏やかな沈黙だけが満ちていた。

私は、三度の結婚と三度の離婚を経験した。

愛したつもりだった。幸せになれると信じた。

でもそのたびに、現実の重さと向き合い、私は一つずつ夢を手放してきた。

それでも私は、生きている。

過食嘔吐で体を壊し、絶望の中にいたあの頃。

「消えてしまいたい」そんな言葉が毎日のように頭の中を回っていた。

でも、お腹に宿った命が、私を現実に引き戻してくれた。

「私、守らなきゃいけないものがある。」

そこから私は少しずつ変わっていった。資格を取り、働き、子どもを育てた。

何度も泣きたくなる日もあった。誰にも言えない怒りや哀しみで、声にならない夜もあった。

けれど、今――

私の息子たちは、立派に自分の人生を歩いている。

長男は家庭を持ち、次男は自立し、それぞれの道をしっかりと踏みしめている。

私は、もう誰かにすがる人生はやめた。

「一人で生きる強さ」と「誰かを信じるやさしさ」は、矛盾しない。

その両方を持つには、私はこれだけの時間と痛みが必要だったのだと思う。

そして今、私は「カウンセリング」という形で、自分の経験を誰かのために役立てたいと思っている。

あの頃の私のように、暗闇でもがいている誰かの、光になりたい。

もう私は、過去に戻らない。

罪悪感にも、後悔にも縛られない。

私は今、自由な鳥だ。

誰の許可もいらない。どこへでも飛んでいける。

空は広く、世界はまだ私を待っている。

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